高校生夫婦はじめました。



***


――正臣が起きる前、私は台所で朝食の準備をしていた。

熱したフライパンの上に卵を二つ落とす。“じゅわっ!”と焼ける音がして、間もなくして目玉焼ができあがる。

「よしっ」

お皿に載せて、一緒にサラダを盛り付けて。あと昨日特売で安く買えたウインナーも。
ちょうど同じタイミングで食パンが焼きあがった。すべてテーブルに運び、コップに牛乳を注いで、完成! ……となったものの、正臣はまだ起きてこない。

「もうっ……」

さっきからずっと呼んでるのに!

私は手を洗い、エプロンで拭きながら正臣の部屋の前に立つ。――彼は宣言通り、真仁さんと暮らす家を出て新しく部屋を借りた。真仁さんは引っ越し当日まで寂しそうにして、最終的にはいじけていたので、申し訳なくなった私は正臣に「本当に真仁さんと離れていいの?」と訊いた。

彼の返答は明快だった。


“ちょうどいい機会かなって”

“父さん、俺がいるから海外でやりたい研究も我慢してたんだと思う”


そっか……と、私は妙に納得した。

私と正臣は良くも悪くも似た者同士で、片親から愛情を注がれる幸せも、やるせなさも、私たちは知っている。親に“自分自身の幸せを優先してほしい”と願う気持ちも、よくわかる。

正臣がいろんなことを考えた末にこの結婚を決めたと知って、ほっとした。同時に、私が塞ぎこんでいたときに、彼はこうすることを既に真剣に考えていたんだと思うと、かなわない気持ちになった。

(子どもなのか、大人なのか……)
< 25 / 66 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop