最弱救世主とドS騎士

送り状には私達の住所と阿連さんのフルネームだけ。
住所も電話番号も載ってない。

送られてきたのは赤と白の二本入りワイン。
ラベルに書かれている文字はどちらかといえば象形文字で、おしゃれだけれど全く読めない。
イラストは雲を突き破る高い塔を備えた豪華なお城。空には緑のドラゴンが飛んでいた。
阿連さんは夫の大学時代からの友達で、世界中を飛び回る実業家らしい。
この阿連さんが送ってくれるワインがすごく美味しくて、ネットで調べて買わせてもらおうと思うけどネットになぜか引っ掛からない。
この時代
こんな美味しいワインがネットに引っ掛からないなんて、すごく不思議だった。
夫に聞くと『限定生産とか?色々聞くと面倒になって送ってこなくなるタイプの変わり者だから、別にいいんじゃない』って流されてしまった。

阿連玖須さん……変わった名前だけじゃなくて、本人も変わっているのか。

食卓テーブルでワインを眺めていたら、玄関から慌ただしく夫が帰ってきた。

「ごめん遅くなった」
仕事を切り上げて急いで帰ってきてくれたのね。息が切れてるよ。
そのまま私の背中にまわって頬にキスをする。
唇が冷たくて気持ちいい。

「友人(ゆうと)は?泣かなかった?」

「大好きなおばあちゃんのお迎えだもん。喜んで出かけたよ。あ、そういえばお義父さんも一緒だった」

「午後から会社早退してた」
私達は顔を合わせて微笑み、今度は唇に彼がキスをする。
三回目の結婚記念日。
今日は1歳の息子を彼のご両親に預けて、ふたりっきりのディナーです。


< 229 / 236 >

この作品をシェア

pagetop