思い出はきれいなままで
ストーリ 2
午後戻ると、武田室長の元に向かう。
仕事の内容を早く覚えなくては……。

「加納さん」
秘書室の扉を開けようと思ったところで、後ろから声を掛けられて振り返った。

「社長」
すぐ後ろのいた社長に私は驚いて、慌てて頭を下げた。

「いいよ。そんなかしこまらなくて」
そう言われ、私はホッと息を吐いた。

「室長の所?」
「はい」
やはり、この人は別人に決まってる。
そう思う事にして、私はビジネスライクに微笑んだ。

「会議が早く終わったらから、室長とも話をして、直接私から仕事を覚えてもらおうと思って探していたんだ」

「そうだったんですね。申し訳ありませんでした」

探させてしまった?そう思って謝った私に、社長は優しく微笑んだ。
こんな微笑みまで似てる。

ドキンと久しぶりに音を立てた、自分の鼓動に驚いて、慌てて動揺する気持ちをグッと押し込めた。

社長の後姿を見ながら、社長室へと向かう。
社長室は2部屋に分かれていて、すぐの部屋が私や来客や、他のスタッフが仕事ができるようになっているスペースで、その奥の部屋には社長のデスクがある。


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