俺の彼女が一番可愛い!
* * *

「はー楽しかった!」
「…綾乃ちゃん、全力で楽しんでたね。」
「健人も意外と楽しかったでしょ?」
「…初めて人に何か教えるってのをやったけど、…楽しかった、かな。」
「ならよかった。」

 綾乃はそっと玄関のドアの鍵を閉める。

「綾乃ちゃん。」
「んー?」
「綾乃ちゃんの癒しポイントって何?」
「え?」
「さっき話してたじゃん。前のこと。」
「あー…あぁ、さっきのね。まぁ、健人の作ってくれるパスタも癒しポイント高かったけどさ。」
「うん。」
「今日顔色悪くないですか、とか割と私の体調気遣うようなこと言ってたんだよね。」
「忙しくてよくきてた時期があったもんね。」
「そういうの、嬉しかったよ、結構ね。」
「そう、だったんだ…。」

 綾乃の腕を引いて、健人はぎゅっとその小さい身体を抱きしめる。

「…たまらなくなっちゃったでしょ?」
「…ほんとだよ。」
「まぁでも、まさかこうなるとは思ってなかったけどね。」
「え、そうなの?」
「いやだってさ、どう考えても健人の方から見て自分は恋愛対象外だと思ったし。可愛い子が今日も可愛いこと言ってる~癒される~くらいの気持ちだよ。」
「…好きですよ、気にしてますよって精一杯のアピールだったのになぁ。」

 少し悔しくて、健人は綾乃の肩に頭を乗せた。

「でも、積もってはいたんだよね、そういう気持ちが。だから、健人から好きだって言われても驚いたけど、割とすんなり飲み込めた。だからさ、岡田くんの気持ちも彼女には降り積もってると思うよ。あとはどこで誰が、どう引き金を引くか。」
「…綾乃ちゃん、完全に楽しんでるでしょ。」
「半分ね。でも、うまくいってほしいよ。また家で料理練習していいからね。」
「…ありがとう。」
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