朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】

side咲桜



学校での神宮先生は相変わらずだ。
 

穏やかな表情で優しくて目立たない。
 

だからその話を聞いてしまった時、呼吸(いき)が止まるかと思うほど驚いた。


「神宮先生って彼女いんのかなー」
 

そのとき私は、笑満と、今日も頼の机に集まっていた。


先日は騒ぎまくってくれやがった問題児な頼のテンションは落ち着いているようで、ここのところはまた寝こけてばかりいる。


頼の机は窓側で、気温の心地いい今日、窓は開いていた。だから聞こえてしまった。
 

窓の外――中庭の方から、女子たちの話し声が聞こえて来た。聞き覚えのある声じゃないから、誰かはわからなかったけど……。
 

ぴたりと固まったのをすぐに察知した笑満も、難しい顔になる。


「どうなんだろうねー。神宮先生、結構いいよね。背ぇ高いし優しいし」


「あのメガネ取ったら案外イケメンだったりしてー」
 

きゃいきゃい騒ぐ女子の声。


――すぐに押し黙った様子から、本気で『神宮先生』に興味あるのは最初に話した子だけのように感じた。


神宮先生――流夜くんの評価って実は高いの?

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