蝉死暮
蝉死暮
死に遅れた蝉達が生命を削りながら奏でる時雨が、荒い砂利道を緩やかに歩く俺の足音を容赦無く掻き消していく。

初秋になっても全く衰えを見せない太陽光が、雲によって遮られる事も無く、最短距離を通って襲いかかってくる。

空気中の水蒸気が全て蒸発しているのではと思うほどに乾ききった辺りの空気へと放射状に伝わっていくその熱が、視界の奥の空間を無作為に歪ませる。

次元すら判別出来ぬ程に揺らめくその不思議な空間に魅入られてしまうのは、久々に浴びる強烈な日差しで頭が火照ってしまっているせいなのだろうか。
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