ヴァーチャル・リアリティ

ドアへと向かうが、あいかわらず開かない。


キッチンの中を見回してみると、部屋の四方がグニャリと歪んで梨花子の姿が見えた。


「梨花子！」


咄嗟に近づこうとするが、その距離は縮まらない。


「大丈夫だよ結愛。これは映像なんだから」


こっちの姿も梨花子に見えているようで、そう聞こえて来た。


陽大の姿も、晴道の姿も見えている。


このゴーグルを付けてから、初めてみんなの姿を確認することができた。


しかし、それぞれの顔は戦慄し、梨花子も無理やり笑顔を作っているため妙に歪んだ表情をしている。


みんなも、あたしと同じように怖いのだ。


不意に、梨花子の後ろに大きな影が現れた。


それは暗闇の中に溶け込んでいて正体がわからない。