ヴァーチャル・リアリティ
春は別れと出合いの季節だ。


少しだけ寂しくて、だけどワクワクする季節。


「よぉ! 遅いぞお前ら!」


通学路の途中で悠太郎がそう声をかけてきた。


あたしたちが来るのを待っていたのだろうか。


あたしたちは早足で悠太郎へと駆け寄った。


いつの間にかいつものメンバーがそろっていて、みんなと一緒に学校へ向かっていた。


校門の前には祝卒業というパネルが飾られている。


本当に今日で卒業なんだ。


そう思うと、胸の奥がジンッと熱くなった。


「大丈夫か?」


その声と同時に手を握りしめられた。


振り向くと陽大があたしのことを気にかけてくれている。


「うん。ちょっと寂しいなって感じただけだから」


そう言うと、陽大はあたしの手を更に強く握りしめてくれた。


まるで、『大丈夫だよ』と、言われている気分になる。
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