ヴァーチャル・リアリティ
キシム廊下を歩きながら、


「どうして自分が寒い思いをするのか、わかる?」


と、質問が飛ぶ。


「僕が……悪い子だから」


あたしの口がそう答えた。


「そうね。だからお父さんとお母さんもいなくなった」


途端に、女性の声色が変化した。


低くて恐ろしい化け物のような声だ。


あたしの体は咄嗟に逃げようとしていた。


しかし抱かれた肩は簡単にはあたしを離したりしない。


指先の爪が、薄い生地の服にキツク食い込んでくる。


その痛みに顔が歪んで、涙が滲んだ。


「悪い子にはお仕置きが必要なんだよ。わかるだろ?」


そう言いながら、あたしの体を強引に引きずって行く女性。
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