【完】キミスター♡
それから、帰り道。
お祭りの余韻と、久しぶりのデートの余韻に浸っていた私は、ふと頭ら辺に緋翠の視線を感じて、上を向いた。

「なーに?」

「や。何回見ても可愛いなって…」

「…っ!そ、そんなの、緋翠だってそうじゃん……って、ん…っ」

「そんな姿、他の誰にも見せないで?」

繋がれていた手を口元に引き寄せられて、軽いキスを落とされる。
まさか、緋翠の方から外でそんなことをするなんて思ってもみなかったから、心臓がバクバクした。

本当に、無自覚イケメン!
こっちの心臓が保たないよ…っ!

そう思って、私はお返しにとぐーっと背伸びをして、それでも足らない分は緋翠のシャツを引き寄せて、キスをした。

もう、何度も交わしてきたキスだけど…。
今日ほど甘いものは今までなかったような気がする…。

「海夏は、ほんと可愛いよ…」

「緋翠もね!」

「そこは、可愛いじゃなくて格好いいがいいなぁ…」

なんだか、学校にいる時よりネガティブに見えない緋翠に、胸が高鳴りつつ疑問も起こる。

「ねぇ…なんで、緋翠はいつも自信がないの?」

そう質問すると、困ったように言葉を濁す。
だけど、今日こそははっきりさせたくて、私は食い下がらない。

「……海夏が、可愛いから」

「……は?」

「校内じゃ、海夏のこと狙ってる奴多いんだよ?知らなかった?」

「そんなこと知らないよ?!」

急なフリに、私がわたわたとすると、可笑しそうに緋翠は笑う。

「俺が、告白を急いだのも、他の誰かに取られないようにする為。…勿論、玉砕は覚悟の上だったけど…」


手を繋ぎ直して、緋翠はそう言うと今度は私の額にキスをする。


「だから、学校じゃ、気が気じゃなくて…」

「って、あんなにネガティブにならなくたっていいのに…」


私は、片目を瞑ってそのキスを受け、そう拗ねたように返した。

「でもさ…俺には海夏さえいてくれたらいいから…」

「緋翠…」

「じゃ、もう今日は帰ろっか。家まで送るから」


もっと触れ合っていたい…。
そう思ってしまう自分をなんとか制して、私は小さくうんとだけ頷くと、緋翠の大きな手に自分の手を力強く包み込ませて、そのまま帰路についた。


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