家族でも、幼なじみでもなくて。
そして出発の日。

太一くんのお父さんが車で空港まで送ってくれた。
愛海と太一くんも一緒にお見送りしてくれた。


「いってらっしゃい」

「着いたら連絡してね」

「うん。いってきます」


不安だったけど、2人のおかげで少し楽になった気がする。


チェーンを通してペンダントにした ビーズの指輪を、服の上からぎゅっと握りしめた。


……大丈夫。突き放されようと、私は必ずりっくんに伝えるんだ。
もう逃げないって決めたから。


「……どうしたの? 具合悪い?」


隣を見ると、優しそうなおじさんとおばさんが心配そうに私をみていた。


「あ、いえ……」

「苦しそうにしていたから。でも、僕の勘違いだったね」

「お気遣いありがとうございます」


軽く頭を下げると、おじさんはにっこりと微笑んだ。
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