dieっと


「いゃやああああああ‼︎」


もがいていたアキが、すぐに静かになった。


動かなくなった。


ひざ下まで水がせり上がってきている、その中で、由加里だけが不気味に埋もれている。


アキ自身に、何度も何度も噛みついていた。


「食べて__る?」


誰にともなく問いかけたが、明らかだ。


由加里は、アキを食べている。


北山の喉元を喰らった時のように。


きっと、アキが吐血したからだ。北山も指を切った。


それまで全てに対して無反応だった由加里は、人の血に反応する。


鉄臭い匂いなのか、びくんと体を震わせ、喰らいつくんだ。


なぜか拘束も取れていた。


1kg痩せない限り、人の力では解けない鎖を引きちぎったのだろう。


人の力では解けない鎖。


それなら由加里は一体、なんだというの?


人を食べる由加里は、化け物なのか?


かちゃり。


そんな音に振り返る。


ようやく、惨たらしい食事風景から目をそらすことができた。


そこに、篤志が立っている。


拘束を解いた、沢渡篤志が。


アキと同じように、先ほど食べた物を吐き出して1kg痩せたんだ。


水は、私の膝を超えていく。



< 263 / 337 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop