dieっと


「大丈夫?」


すぐに声を掛けてくれたのは、熊のように大きな男の人だった。


今にも破裂しそうなくらい、丸くて大きい。


「あっ、大丈夫です」


「でも、立てる?」


「はい___っ‼︎」


男の差し出す手を押し戻し、なんとか1人で立ち上がろうとしたが、足首の痛みに再び座り込む。


「捻挫かもしれないな」


「大丈夫なんで」


少し強めに言ってしまった。


拒絶に近い。


でもいいんだ。とても優しそうな感じだけれど、心の中までは分からない。今は、誰かの優しさが怖い。


しかし、男は気にする様子もなく周りに声を掛ける。


「誰か、手伝ってもらえませんか?蹴躓いて怪我したようなので」


「あのっ、ホントにいいんで‼︎」


「このままじゃ、失格になるよ?せっかく参加したのに。一緒に頑張ろう」


男はにっこりと微笑む。


年は20代半ばだろうか?体はでっかいが、顔はとても小さくて童顔だ。その笑顔は、強張っていた心を溶かすには充分で、私はしっかり頷いた。


「僕は小塚俊一(こづかしゅんいち)。君は?」


「私は、太田真帆です」


「真帆ちゃんね。立てる?僕が肩を貸すから___」


「デブ、邪魔なんだよ‼︎」


いきなりドンっ‼︎と突き飛ばされた小塚さんが、山道に倒れこむ。



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