7・2 の憂鬱
「7月2日じゃないけど、白河と似てると思ったんだ。だから、僕が白河に惹かれたのは、もしかしたら自然なことだったのかもしれないなと思った。縁、ていうのかな、そういうものが実際にあるんだなと感じたんだよ」
話しながら、戸倉さんはわたしの前髪を整えてくれた。
シャツを羽織っただけの戸倉さんは、胸元があらわになっていて、嫌でも視界に入ってくるそれを、見ないフリするのは少し難しい。
この状況に心臓は飛び出しそうなほどに早打ちしてるのに、気持ちのどこかは、冷静を握りしめていた。
戸倉さんの話を、少しも逃すことなく知りたいと思ったから。
「縁、ですか?」
「そう。僕がロマンチストなら、運命と言ったかもしれないけど」
”運命” なんて言われて、思わず冷静を手放しそうになったけれど、シーツをぎゅっと握ってこらえた。
「・・・何に、縁を感じたんですか」
わたしが訊くと、すぐにキスができそうな至近距離で戸倉さんがフワリと笑った。
「だから誕生日だよ。白河の誕生日と、僕の誕生日」
「だけど戸倉さんのお誕生日は7月2日じゃないんですよね?」
「うん。でも、どのグループにも入らない、仲間外れという意味では一緒だからね」
まるでなぞなぞのようだ。
こんな体勢で交わす会話ではないようにも思えるけど、わたしは、本気で答えがわからなかった。
すると、わたしの顔は怪訝に満ちていたのだろう、戸倉さんが、「意味がわからないって言いたげだね」と目じりを下げた。
そしてゆっくりと肘を折って、さらに接近してくる。
体勢的には、もう、さっきの濃厚な時間と変わりない。
――――――キスされる。
そう直感したわたしは、とっさに目を瞑って彼を待った。
けれど、訪れるはずのぬくもりは、べつの場所に届けられたのだった。