7・2 の憂鬱




去年のように話をするわたし達を、穿った見方で噂する人はいたけれど、それをさらに大きくさせることがあったのは、三日ほど前のことだった。


どうも、梅雨どきの気まぐれな雨を回避しようとしたある女性社員が、いつもより早く出社して、わたしと戸倉さんが二人きりでいるのを目撃したらしい。


それはあっという間に広がって、



 ”白河と戸倉は毎朝誰もいないオフィスで密会している”



そんな噂がまるで真実のように流れはじめたのだ。



そしてそれは一部の女性社員からは反感を買って―――――――――――





「・・・でもさ、もしあの二人が付き合ってたとしたら、ちょっと戸倉さんにもがっかりだよね」
「え、なんで?」
「だって白河さんって、なんかあっちこっちに愛想振りまいて、いい子ちゃんだと思わない?ぶりっ子っていうか・・・。あの戸倉さんも、結局はああいう子を選ぶのねーって、がっかり」
「ああ、それ、分かるかも。ぶりっ子なとこあるよね、白河さん。付き合い悪いくせに、愛想だけはいいっていうか、媚売りまくり」
「私達との飲みには付き合えなくても、イケメンに誘われたらついて行くわけね」
「あー、もう!なんで男ってそういう女に騙されるかなぁ?」
「戸倉さんはそんなタイプには見えなかったのにねー」
「案外、ああいう仕事ができる男の人は正格悪い女に引っかかりやすいのよ」
「もう、本気でがっかりー」





自分の噂話で盛り上がっているのがはっきり聞こえてしまったのは、トイレの個室の中でだった。


出るに出られず、じっとしていると、彼女達がメイク直しする音が大きく聞こえてくる。


わたしは、そのカチャカチャという音を聞きながら、気持ちが沈んでいった。


ダイレクトに聞いてしまったわたしのへ陰口。

その中に、松本さんの声も混ざっていたのだ。










< 25 / 143 >

この作品をシェア

pagetop