7・2 の憂鬱




・・・・なんで今、思い出したりしたんだろう?


不思議に思い、浮遊させた視線の先に、6月のカレンダーがあった。


ああ、そうか。
めくり忘れていた職場のカレンダーを6月に変えたら、その隅に来月7月の分も載っていて、自分の誕生日が目に入ったんだ・・・・


「あれ、白河がカレンダー変えてくれたんだ?」


思考を沈ませていると、真後ろから声をかけられた。

振り返ると、同じ部署の先輩が穏やかな笑顔を向けてくれていた。

ちょうど外回りから戻ってきたところらしい。
スーツの上着を脱いで腕に掛けている。


「もう6月か・・・1年も半分過ぎるんだな」

びっくりしたように言った先輩は、テレビで活躍している若手俳優達よりもイケメンだと噂されていて、仕事もできると評判なのに、全然気取ったところがない、物腰の柔らかな人だった。


わたしは「そうですね」と無難に返事したものの、内心では、

・・・・本当は、半分を過ぎるのは7月3日なんですよ

なんて、細かな指摘をしたりしていた。


すると先輩は、

「まあ、とにかくありがとうな。白河はいつもそうやってちょっとしたことに気が付いてくれるよな。いつも助かってるよ」

ぽん、と、わたしの頭を軽く叩いて、自分のデスクに戻っていったのだった。


わたしは、その先輩の後ろ姿をぼんやりと見つめていた・・・・










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