極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
今日のカレルは、少しいつもと様子が違っていた。

「私の髪を綺麗だって言うなんて……」

面と向かって褒めて来るなんてカレルらしくない。
ちょっと皮肉な笑みを浮かべながら、シェールにちょっかいを出して来るのが彼なのだ。

と言っても、褒められると素直に嬉しくて、館に戻ってからも、思い出しては喜びと気恥ずかしさを感じていた。


カレルと出会ったのは、今から一年程前。

王弟妃としての誰からも顧みられない退屈な生活にうんざりして、館を抜け出した事が始まりだった。

久しぶりの外出についはしゃいでしまったシェールは、村の外れの川辺で転んで怪我をした。

その時にノーラに治療をして貰い、その働きぶりに感動し弟子入りを願い出たのだ。

薬作りには山に自生している薬草が必要になる。
カレルは山に入る時の護衛として紹介されて、それから直ぐに意気投合した。

薬師の弟子になりカレルと出会ってから、シェールの暮らしは激変した。

浮かない気持ちでただ時が過ぎる事を待っていた日々の中で、楽しみが出来たのだ。

五日に一度の薬師の勉強と、カレルとのおしゃべり。

時間の流れは早くなり、気付けば待ちわびていた千日目まであと二月を切っていた。


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