姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
乙矢がテミスに入ったきっかけは、雪山で遭難したことだった。
当時、失恋して自棄になっていた彼は、通常のスキーコースを外れた山中で遭難してしまったという。
そして体力を消耗してもう動けなくなって、死を覚悟した時。
猛吹雪の中、自分に向かって真っすぐに歩いて来る白いワンピースの女を見た。
幻覚だと思った。
そうでなければ、死にかけて幽霊が見えたのだと思ったらしい。
とても、生きている人間ではないと。
そう信じて疑わなかった。
だけど薄れかけた意識の中、彼女は乙矢を抱え起こした。
触れた手の感覚はもう無くなっていたけど、
彼女に出会えた事が信じられないくらい幸せだったと乙矢は言う。