あなたに恋をして(仮)
心のドアをノックして
僕は将来のことは考えてもわからない。
これといって取り柄というものはない。
スポーツができるわけでも勉強ができるわけでもない。
日々平穏を保ちたい、事なかれ主義の大学一回生だ。
これまでの義務教育それから高校での集団生活に辟易していた。
スマホの話になると自分が持ってないから、話についていけない。
好きな曲の話になると流行の曲がさっぱりわからない。
勉強の話はそもそもわからないし、こっちから尋ねたい程である。
友達はいないわけではなかったが、大学生になってから連絡はしていない。
地元の高校とはかなり離れた場所なのでスマホを持ってない僕には連絡手段の取りようがないのだ。
好きなことは一つ。読書だ。しかし、本を読むということは一人で簡潔している。
本を読むだけなら、僕は何時間でも読める。休日に気づけば夜になっていたこともままある。
つまり話が合わなかったのだ。
今までの学校生活は一人さもしく生きてきた。
いじめにはあってない。
そんな僕だったけど、昨日女性から告白された。
彼女の名前は一色桜という。同じ大学で1歳年上の先輩になる。
大学で迷子になったところ彼女が声をかけてきた。僕は一言で方向音痴である。
入学式を終え、これから履修する講義を受けに行く場所がわからなかった。
途方にくれていたら彼女が声をかけてきたのだ。
「ねぇ、君一回生の人?」
唐突に話をふられたのではいと返事をした。
もしかすると道案内をしてくれるのかとほのかな期待をした。しかし次の言葉で僕の頭は茫然自失となった。
「もし良ければあなたの彼氏になってくれませんか?」
聞き間違いかと思った。当たりを見回したら、彼女が君のことだよと笑った。
「はい?」
そして、何を思ったのか彼女は僕の住むアパートに行きたいという。
そこで詳しい話をするからと彼女に言われた。
胸をときめかせるのにはまだ早いと思った。
異性と感じる女性と話をすることがこれまでにあまりなかったのでこれからどうなるのか先行き不透明に感じた。
何より講義に出ない。さぼりだ。
彼女に講義のことを伝えると、私がテストを教えるから安心してと言われた。
やはり僕の彼女というのか、これから先も僕の恋人になるつもりでいるらしい。
何故彼女が僕に告白してきたのか知りたい。好奇心にかられ、渋々な顔をしながらも承諾した。内心では胸が高鳴るのを押さえるので必死だった。
これが僕と彼女の出会いだった。まさか同棲生活が始まるとはこの時には思いもよらなかった。
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