翼の折れた鳥たちは

朝礼の始まる前のいつもなんだかざわざわとしているはずのリハビリ室に一歩足を踏み入れた瞬間に、雰囲気がいつもと違っていることがすぐに分かった。


空気が重たい。


「何かあったんですか?」

近くに居た介護士のおばちゃんに声をかける。

「昨日の夜勤帯で亡くなったんですって」

えっ?誰が?

声にならない声が出た。

「園田さんよ。ほら、敦也くんの部屋の奥のおじいちゃん」

重たい息を吐きながら、おばちゃん介護士は声を潜める。

「急変だったらしいんだけど、気が付いたのは敦也くんだったらしいのよ」

その言葉に息苦しさすら感じていた胸が、さらに締め付けられるような気がした。


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