翼の折れた鳥たちは


今夜は眠れそうにない。

数か月前、部長に呼び出されて『理学療法士』か『歌手』か、と選択を迫られた時のことが鮮明に思い起こされる。

それと同時に『新しい世界に踏み込むことを怖がらないで』と歌手になることを素直に応援してくれている敦也くんの笑顔が脳裏に焼き付いている。


まさかこんなタイミングで、決断を迫られるなんて思ってもみなかった。


だけど、『バスケ、見に行きたい』と、半分本気で半分冗談で言った敦也くんの喜ぶ顔を見てみたいって思う気持ちが強くなっている自分に気が付く。


外の世界に飛び出す瞬間の敦也くんを見たい。

単純にそう思った。

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