翼の折れた鳥たちは


残り少ない理学療法士としての時間を過ごしていた、そんな頃だった。

何気なく家のポストを開けると、大きな茶封筒が入っていた。


「これって……」

敦也くんの退院直後に受けたオーディションの主催者からの郵便物。

あの頃は想い出作りだと思っていたし、まだ敦也くんとの日々が色濃く自分の中に残っていた頃で、感情たっぷりに敦也くんのために作った歌を歌ったんだっけ。


結果通知が遅いなとは思っていたけれど、引継ぎや残務処理に忙しくって、すっかり忘れてた。


そんなことを思い出しながら、開封すると大きな紙にバランスよく書かれた合格という2文字が目に入ってきた。


「受かった……」

信じられない気持ちのまま、私はその紙を穴が開くんじゃないかって程何度も見返す。

最終選考に残ったことを知らせるその通知は、私の次へと繋がるステップになるはずだ。

私は喜ばずにはいられなかった。


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