微笑む女『短編』
『話は聞いていたけど…やっぱり、お母さんそっくりね。』
『お母さんそっくりって、お前、妻の顔知らないだろ?』
また、あの感じ。
奥様の顔なんて、わたしは知らないはずなのに…。
どうして、奥様の顔がわたしにわかるのだろう?
『確かに、俺に似ていない可愛い娘だよ。』
嬉しそうに笑う愛しい男。
女は不安に駆られて、スーツの上から男に抱き着く。
『あなたは素敵な人よ。一人占めしたいくらい…。』
『行くよ。』
愛しい男がスルリと女の腕から逃げる。
・