混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
エピローグ
 8日間は、平穏な航海と言えた。

 結局、マイケルはリリと同室に居続け、一人部屋にイライザが、マイケルの替りにガブリエルがアレンと同室で過ごした。

 次の寄港地は、クイント国外になる。駐留部隊はいるものの、ララティナ港のようにはいかないだろうという事はわかっていた。

 リリとマイケルはこの港で下船し、リリは駐留部隊へ一度合流後、海軍の定期便によってララティナ港へ戻る事になる。一方のマイケルは、仕事の為、港へ居残る事になっていた。できる事なら、リリのいるララティナ港に戻りたいようだったが、仕事人としての責務を全うするよう、新妻に諭されて、しぶしぶ同意したのだった。

 別れを惜しむリリとマイケルの睦まじさは、見ている人間も胸焼けするほどだったが、甘い蜜月の隙間を縫うように、リリが可能な限り、イライザとも時間を共にしてくれたのは、イライザにとっては喜びだった。

「今度会う時までには、一章分書き起こしておくから、楽しみにしていて」

 そう言うイライザとリリは、まるで十年来の友人同士のように、固く握手をして、別れた。

「僕もここで下船するからね」

 アレンの言葉に、イライザは少し心細そうに、ガブリエルはうれしそうに見送った。もちろん、ガブリエルの方にも、一抹の寂しさは浮かんでいたけれど。

 アレンは、別航路で地域巡回をしてから、ヘンリー・アトキンソンの元へ戻る事になっている。

「結婚式の準備はしておくから」

 兄替わりの従兄弟とのしばしの別れに、イライザは少しだけ不安になったが、隣に立つガブリエルの頼もしさに安堵し、そして、まっすぐに開けた見知らぬ土地へ一歩踏み出す事への好奇心に胸が踊った。

「イライザを、任せるから」

 アレンの言葉は、重く、しかし、確かな責任をもって、ガブリエルの胸に刻まれた。

 見送るガブリエルの瞳には、愛しい者を守る決意と、責任があった。

「さあ、行きましょうか」

 そう言うガブリエルの手をとり、イライザは歩き出す。

 いつかくまなく見て回りたいと思っていた世界は、今、目の前に広がっている。そして、隣には、自分を支えてくれる相手もいる。

 握った手の頼もしさに勇気をもらい、イライザは進む。

 まだ知らない場所を見て、知って、それを、したためるための旅へと。愛する人と共に。

(終わり)
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