混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
「思ったんだけどさ」

 後からイライザに怒られても困るので、キッチリ当分して、半分を食べ終えたアレンがひとごこちついて言った。

「君、食べ物をくれる人に弱い?」

「そ、そんな事は……ない、よ?」

「いや、弱いね、実際、今、ぽーっとなってるじゃないか」

 ズバリ、アレンに指摘されて、イライザは言葉をつまらせた。

「イライザ、君、イザード氏の事、ちょっといいなって思い始めてない?」

「だったらなんだっていうの」

「否定しないんだ! ……まあ、いいけど、だったら、僕のこの苦労って何?」

 アレンは、着たままになっていた晩餐用のドレスの裾を持ち上げて、礼をした。

「うう……」

 イライザがうめくと、アレンは続けた。

「ガブリエル・イザードは、ブルームーン商会の娘との結婚を望んでいる、そして、君は、ブルームーン商会社長、ヘンリー・アトキンソンの娘である君は、ガブリエル・イザード氏に惹かれ始めてる、……少なくとも、興味は持ってるよね」

 女装のままだが、アレンの声はいつもの声だった。

 イライザは声をつまらせて、しかし、アレンを真っ直ぐ見つめた。

 図星をつかれて、苦しい立場になっても、視線を逸らす事はしない。

 迷いがあっても、真っ直ぐに前を、先を見ようとするのがイライザなのだ。

「……私は……」

 迷いながらも、何かしら言わんとするイライザを、最終的にアレンは制した。

「まあ、いいや、最初の港に着くまで、あと十日あるんだから、さて、イライザ、僕これ、一人で脱げないんだけど、手伝ってくれる?」

 アレンは、イライザに厳しい事は言わない、言わなくても、イライザが自分で気づく事を知っていて、自らの言葉を引き出そうとする。

 イライザも、その事には気づいていて、アレンには素直に従うし、我儘も言えるのだ。

 アレンは、自分がイライザに対して恋愛感情を持つことができたら、話は早かったんだろうな、と、少し思った。二人は、あまりにも似すぎていて、アレンはどうしても、イライザを姉か妹にしか思えないのだった。
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