混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
 顔見知りの従業員に思い切り笑われて、口止めの為、後で一杯おごると言ったら、できればそのドレスのままで、と、言われて、さらに下腹に一発食らわせたところで、『青い不死鳥号』よりやや遅れて着いた、ブルームーン商会の定期船に、アレンとイライザ宛の荷が積まれていたと、運ばれてきた。

 それは二通の手紙と、イライザの為の紙とインク、そして予備のペン先った。

「お父様……」

 手紙と、届けられた荷物に、イライザが感動している横で、アレンはヘンリーからの手紙に愕然としていた。

『イザード造船と、海軍に動きあり』

 それはとても短い文章だった。

 急成長の影に、何らかの後ろ盾の存在を察知していたヘンリー・アトキンソンは、内々にイザード造船の動きを調査していた。イザード造船側に伝手はなくても、ヘンリーは海軍にパイプを持っている。海運業をやる上で、それは当然の事ではあるが、イザード造船と海軍の繋がりは、一企業と、軍との限度を超えているように思えるという事だ。

 通常、海軍が新造船を作る場合、入札が行われる。数社に対して見積もりを提示させて、最も安価で請け負う造船所へ依頼をする為の仕組みだが、イザード造船は特殊なラインを使い、競合の入札価格を事前に知っているのでは無いかという疑いがあるという事だった。

 もちろん、情報の見返りとして、何かしらの便宜を図っているのだろう。

 多くは金銭、賄賂の類だが、海軍内部でイザード造船に情報を流している人物がいるという事だ。
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