混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
 アレンは、のびのびと街を歩いていた。

 今まで考えた事もなかったけれど、女性の服があれほど動きにくく、心許ないものだと思ってもみなかった。

 イライザは、世のご婦人方に比べると、着ているものはごくごくシンプルで、最低限の礼儀を満たしさえいればよいという考えのもとにあるという事は聞いていたが、そうなる気持ちがなんとなくわかった。

 今までアレンが何の気なしに見ていた女達の装飾が、努力と忍耐に立脚しているという事に驚いていた。

 アレン自身は、女性の好みは、どちらかといえば、会話が弾むかどうかや、共に居て過ごしやすいかといった、内面を見ていたつもりではあった。

 しかし、外見についてそれほど強く意識をしていたつりは無かったものの、アレンが何となく好ましいと思っていたものが、たゆまぬ努力の上に築きあげられたものなのだという事に、尊敬の念すら覚えた。

 いじらしさにも似た愛おしさと、なのにきちんと見ていなかった、自分の暗愚さに恥じ入った。

 だが、こうも思った。

 そこまでしなくても、どうかすれば、化粧だって必要無いのに、と。

 細く、華奢な姿を形作る為に、苦痛に耐えるよりは、くつろいだ姿で、本を読み、見聞を広めた方が、より豊かな生き方なのではないかと。

 そんな事を考えながら歩いているうちに、アレンは目的の場所へ着いた。

 そこは、イザード造船の、ララティナ港支部。事前にガブリエルに訪問を伝えておけば、話は早かったかもしれないが、敢えてアレンはそうしなかった。

 扉を開けて、尋ねるのは、マイケル・ニュートン。この姿で会うのは初めてだが、会ってもらえるだろうか。
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