混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
18)出港までに間に合えば
 イライザは、喉の乾きと、頭がひどく重いと感じながら、目を覚ました。一瞬、今、自分がとこにいるのかわからず、ぼんやりとした頭で、ここはどこだろう、家のベッドとは違う、天井も違う、と、起き上がり、そして、どきりとした。

 しまった、眠ってしまった! と。

 リリとの約束が、徹夜で彼女から話を聞くはずだったのに、と、あわてて周囲を見たが、イライザの寝かされている部屋には、イライザの他には誰もいなかった。

 あわてて起き上がり、(幸い、昨夜の服のままだったので)、リリを探しに行こうとドアノブに手をかけたが、外から鍵がかけられている。部屋内から開ける事のできないドアノブを、ガチャガチャと動かしてびくともしない事を確かめた。

 状況が飲み込めなかった。

 既に夜は明けている。では、今は何時になっているのだろうと、見回しても時計は無い。

 今日の午後には、『青い不死鳥号』はララティナの港を出てしまうというのに。

 出港に間に合わなくては、置き去りにされてしまう。そうなれば、『青い不死鳥号』に乗り、旅行記をしたためるというイライザの仕事はふいになる。

 一時は、旅行記をあきらめて、リリの依頼を完成させるべきかとも思った。しかし、もしそれをするのであれば、依頼主のガブリエルに話を通す必要がある。

 請け負った仕事を無断で放棄するような人間だと思われたくは無い、ましてそれがガブリエルとは。

「リリ! 誰か! ここを開けて! 誰か!」

 何かの手違いかもしれない、誤って施錠されたか、あるいは、急用で外出するリリが、我が身を案じて鍵をかけていったのかも。

 そう考えて、何か書き置きは無いかベッドの周囲を探したけれど、それらしいものは見当たらない。

 では、窓はどうだ、と、カーテンを開けた先、窓には鉄格子がはめられて、とても窓からは出られそうには無かった。

 見ると、窓から地上へはだいぶ高さがあり、飛び降りたとして、無傷ですみそうには思えない。

 まずは落ち着かなくては、と、イライザは大きく息を吸って呼吸を整えた。
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