【冴えない貴方は御曹司!?】番外編も完結しました!
次の日も、私はエセ逢坂さんを見るべく、前日と同じ時間に裏玄関から表玄関の様子を覗っているところです。

あっ来ました。やっぱり茶髪、スーツは細身のもので、靴は…昨日の靴の色違い?昨日は黒でしたが、今日は焦げ茶ですよ。

行っちゃった。さあ、私も急いで行かなくては。

エレベーターに乗り込んで、8階のフロアに着くと、自席へ猛ダッシュしました。

今朝はロッカールームへは行かずに、ここで逢坂さんを待ち伏せです。

さて、今日の朝ごはんは、五穀米のおにぎりで、梅干し、昆布、牛蒡の漬物とマグロの角煮です。

パンチのある五穀米にこのマグロの角煮が美味しいんです。一度お試しあれ。

そのマグロのあとは、梅干しなんかも良いですが、牛蒡の漬物(細くて柔らかな牛蒡を白醤油などで漬けたもの…うまうまです)が合うと思います。

シャキシャキの食感が堪りません。

そうこうしているうちに、逢坂さんが眠そうな顔でやって来ました。

おはようございますと声を掛けて、おにぎりと濃いめに淹れた熱々の緑茶をスタンバイ。

さあさあ、召し上がれ!

お手拭きを手渡すと『おっ、白いごはんじゃないんだな』と逢坂さん。

今朝はガツンといってもらいますと言うと、五穀米のマグロの角煮入りおにぎりをパクッと一口。

『オオオオ何だ!美味いぞ。合うな、これ』

パクパクもぐもぐ、美味しそうに食べてくれる逢坂さんには、私も嬉しくて、作り甲斐があるんですね、これが。

猫舌ではない逢坂さんがお茶をごくごく飲んで、次のおにぎりを持ちました。

パクッとかぶり付いた逢坂さんが一瞬驚いて、もう一度パクッと頬張ります。

『マグロのあとのこのシャキシャキ感、無茶苦茶合うぞ』

またまた、オオオオと雄叫びを上げる逢坂さんをお静かにとたしなめて、お茶を注ぎ足しました。

3個目は昆布ですが、京都の一口大に四角く切られた、お上品な甘塩っぱい味つけのものです。

五穀米にも白いごはんにも合いますよ。

これも美味いなと、パクパク食べて完食です。

いつもありがとな、などと殊勝なことを言う逢坂さんに、どういたしましてと笑顔で答える私。

あれれ?私ってば、男性社員とはあまり仲良く話したり、目線を合わせないようにしていたのだけれど、逢坂さんといると、気遣い無用な感じがとっても心地良いみたいです。

でも目下の悩み?は、あっちのエセ逢坂さんとこっちの逢坂さんのことなのですが、いつものブカブカヨレヨレのスーツと眼鏡、黒の混じった茶色の髪、あらら、今日のお靴は…焦げ茶で、昨日のものと同タイプ、さっき見たばかりの、あっちのお方と同じですか?

う~んと腕組みをして唸っている私を、何だ?と言って、お手拭きで顔を拭いていますよ。

ちなみに、小袋に入った紙製のお手拭きなので、おいおいと逢坂さんに突っ込んでしまったお方はスミマセン。

おじさんですかと思わず呟く私を、ギョッとした顔をして見てきます。

さて、今日もきっと、慌ただしいけれど充実した一日になりそうな、そして何か良いことありそうな、そんな予感がしています。





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