ドS上司の意外な一面
***

 こんなトコに押し倒すつもりは、全然なかった――それなのにすがるような彼女の眼差しが強請っているように見えて、どうにも我慢ができなかった。魅惑的な唇に引き寄せられるように、優しくくちづける。

「ん……鎌田せんぱ……」

 キスの途中で、甘い吐息と共に俺を呼ぶ。それが嬉しくて、さらに深くくちづけてみた。

 くちづけながらブラウスのボタンに手をかけていた俺の手を阻止するように、君がそっと掴んでくる。

「じっ、自分で外します……」

 小さいボタンに、てこずっていたのがバレてしまった――









 困っているであろう鎌田先輩に、自分から思いきって声をかけてその手を止めたというのに、耳元でそっと囁かれる。

「プレゼントの包みは、自分で開けたいんです。何が出てくるのか、とても楽しみですからね」

 そう言って、耳たぶを甘噛みしてきた。くすぐったさとは違う衝動に頭がクラクラして、勝手に息が上がっていく。そのまま鎌田先輩のくちびるが、首筋をおりていった。

「あ……んっ……」

 気が付いたらブラウスが脱がされ、背中に回っていた手がうなじから背骨をなぞるように、ゆっくりと触れていく。そしてブラの肩紐を口でくわえて横にずらしたあと、窺うように私を見る視線に躰がゾクッとした。

 それだけじゃなく吐息が肌にかかるからどうにもくすぐったくて身をよじると、ホックが素早く外される。胸が解放された瞬間に、鎌田先輩の大きな手が侵入してきた。左手はしっかり、スカートのファスナーに手がかかっている状態に驚くしかない。

「何を、考えているんです?」

 不意に聞かれて困った。

 今までの男の人は破く勢いで服を脱がしていたし、鎌田先輩がするひとつひとつの動作に息が上がっている自分が恥ずかしくて、キョドるしかなかった。

「もしかして、初めて?」

「いえいえ、初めてじゃないですよ……」

「じゃぁどうして、そんなに不安そうな顔をしてるんですか?」

 そんな質問しながら、スカートとパンストを器用に脱がしていく鎌田先輩。しかもブラジャーの真ん中を、口で咥えて外してしまった。露わになる自分の胸を思わず隠してしまう。

「俺が……コワイ?」

 そう言って、優しく抱きしめてくれた。

「怖くないです。何だかいつもより乱れてる、自分が恥ずかしくて」

「よかった……」

 そう言うや否や唇を重ねる。絡む鎌田先輩の舌に応えようと、自分からも絡ませた。

 その間、左胸の敏感なところを手で優しく責められたせいで、どんどん息が上がってしまう。感じているところに硬くなったところを、鎌田先輩が口に含んだ。キスされたときのような舌遣いに、敏感に反応してのけ反ってしまった。

「あぁっ……鎌田、っ……せんぱ――」

 敏感なところを責められている最中、最後の薄い布を脱がすべく鎌田先輩の親指がかかる。他の指は私の両太ももを愛おしそうに触りながら、ゆっくりと下りていった。その絶妙な感覚に思わず膝をすり合わせてしまい、脱がすのを中断させてしまう。

「感じやすい躰なんですね。ヒットするところがいっぱい」

 私をじっと見ながら言う、鎌田先輩の視線がいたるところを見る。会社ではドジして視線で殺されていたけど、今は違う意味で殺されているかもしれない。

 その視線に油断していたら、最後の布が呆気なく脱がされてしまった。

「責めれば責めるほど、憎らしいくらいイイ反応をしますね」

 私の目を覗き込むように見つめる。いつもする片方だけの口角を上げる、微笑をしながら。

「さては、相当の遊び人?」

「いやいや、そんなに遊んでませんっ」

 全裸での弁解ほど恥ずかしいものはない、ある意味拷問だよ……。

「俺よりも先に、君の全てを知っている男たち全てに嫉妬します」

 そう言って、私の唇を親指でそっと撫でる。それだけなのに、ゾクリとしたものを肌で感じてしまった。

「ここも……ここも」

 首筋や背中、あちこちを長い指の腹で、つつっとなぞっていく。そのたびに、甘い声が漏れていった。

「遊んでいないといいながら、ココはもう、こんなになっています」

 人差し指と中指で、下半身の敏感なところをしっかりと責め立てる。

「んんっ、あっ、やだっ……」

 わざと、音が出るように弄るなんて。

「君が悪いんです。俺を嫉妬に駆り立てたから……」

 奪うように唇を貪る。時折、下唇を吸うように甘噛みされたり耳に舌を這わされたりと、何が何だか分からなくなってきた。

 鎌田先輩の顔が胸におりたときに、ふと床に脱ぎ散らかっている自分の服が目が入る。まるで乱れた今の自分の状態みたいで、かなり恥ずかしかった。

「か、鎌田先輩、お願い……」

「ん……?」

 胸の頂きを咥えながら、上目遣いで私の顔を見る。

「ベットで……しませんか?」

 鎌田先輩の視線に耐え切れずに、目を逸らしながら告げてしまった。

「ベット以外で、したことはないのですか?」

「なななっ」

「それじゃあ、外ではできませんね」

 外って何!? ナニカンガエテイルノ?

 私が目を白黒させていると優しく横抱きをして、躰を持ち上げた。そのまま隣にある部屋に連れて行ってくれる。優しくベッドにおろされるものだと思っていたらプレゼントみたいに、ポイッと放り投げられてしまった。

「かっ、鎌田先輩!?」

「折角のいいところを台無しにした罰です」

 ニヤリと笑って、ネクタイを外す。

「夜はこれから……。仕事同様に、みっちりと教えてあげますよ」

 次々と自分の服を脱いでいく鎌田先輩にドキドキしながら、視線をあちこちに彷徨わせていると、いきなりのしかかって来た大きな躰。これから始まるんだと思ったら、一気に顔が赤くなってしまった。だって、グイグイ腰を押し付けてきたのだから。

「これからダメだのイヤだの言ったら、その度に俺の痕を付けます」

 言うや否や、私の胸元にそれを付けた。

「あんっ……。まだ言ってません」

 つい苦情を言ってしまう、本当はイヤじゃないのに。

「さっき、ここを触った時に言ってましたよ」

 顔を覗き込みながら、私の敏感な部分に入念に触れていく。

「んッ……うぁっ、ああっ」

「俺をこんな風にした罰と一緒に、君を……」

 アイシタイ――

 そう呟いて私の唇を塞いだ鎌田先輩の背中に、両腕をぎゅっと回す。優しい夜が、激しいふたりを見守っていた。

 途中私の記憶が途切れて、気づいたら朝になっていたのである。
< 34 / 87 >

この作品をシェア

pagetop