キミは主人公。~短編恋愛集~
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だって茉耶だよ?
性格はゴリラ、顔はまんまるで鼻も低いし目も小さい。
まさか彼氏がいるとは思わないじゃん。
や、まあ俺には関係ない話だよな、うん。
別に俺、茉耶のこと好きな訳じゃないし。
その証拠に、この一年半、俺にはちゃんと好きな子がいた。
美人でロングストレートヘアのA子ちゃん
文化科の小さくて可愛いR子ちゃん
幼馴染でちょースタイル良いK子ちゃん
好きな子が出来る度に、一番に茉耶に
「茉耶ー俺好きな子出来たかも」
「お。フラれたら焼き肉奢ってー」
って相談しては、毎回告白する前に想いは冷めてった。
話は合わないし、相手に気遣ってばっかりで疲れるし、
好きな子に遊びに行こーって言われても、休日にわざわざ駅まで出るのがめんどくて断った。
でも彼女欲しいなぁとか、いけるんじゃね!とか思って告白してフラれたら、
「よく頑張った。私の奢りで焼き肉行こー食べたら忘れるってー」
と慰めてくれるのが嬉しかった。
あの時から、茉耶には彼氏がいたのかな?
なぁ_休日に駅まで出て、二人でご飯食べに行ったりカラオケ行ったりする奴はさ、
茉耶しかいないんだよ。
「こら岩城!ちゃんと授業聞かんか!!」
先生の説教よりも、寂しさが身に染みた九月の終わりだった。