朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】

side斎月



「なー! もう! なんでこの時間に呼ぶかなー! あのバカ兄は!」


《白》を出て、ひたすら駆けていた。
 

目指すは森の中の庵(いおり)。


主咲くんがいる場所だ。


流夜兄さんと事件関係で話があって、終わったら即庵へ向かうつもりだったのを、いきなり呼び出された。


流夜兄さんの恋人に自分の存在がばれた。……ごめんなさい。
 

まあまあ? 流夜兄さんの態度が柔らかくなったなーとは思っていたから、大事な人が出来たのかねえ、とは思っていた。


自分のように。
 

流夜兄さんがアメリカに留学していたのは一年だけ。


私が単身、親元を離れ祖父母がいる日本に来たのは十歳のとき。


現場での兄さんとの再会は決められたことのように訪れたが、最初は驚かれた。


「お前ほんとに女だったのか」と。


日本に来てすぐ、私は主咲くんと出逢っていた。


十歳の子供ゆえ恋人とはいかないまでも、一番大事な人である意識はあった。


自分にとっての主咲くんが、やっと兄さんにも出来た。


「……文句言いにくいなー」

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