龍使いの歌姫 ~卵の章~
「さてと……」

まだ寝ているレインを起こさぬよう、ティアナは布団から出る。

買ってきた牛肉を細かく切り、下味を付けて米に混ぜ込む。

「後は、これを乗せて」

最後に、大きめの葉っぱを被せ蓋をした。

「こっちはこれでいいわ!」

ご飯が炊ける間に、他の品も作る。

炊き上がったご飯をよそって、他の品を並べ、レインを起こす。

「レイン?朝よ!」

「……んー……おはよう」

眠いのか目を擦っているレインに、ティアナは笑う。

「もうご飯出来てるわ!顔洗って着替えてらっしゃい!」

「うん……ふわぁ」


「お誕生日おめでとう。レイン」

「ありがとう!姉さん」

目の前に並ぶ料理に、レインはニコニコと顔を綻ばせる。

姉の料理は村一番だと自慢できるほど、ティアナの料理は美味しいのだ。

「すべての恵みに感謝して」

「「いただきます!」」

ティアナの言葉の後に、レインも口を揃える。

「美味しい!」

「ふふっ。良かったわ」

ご飯に混ぜ込まれている牛肉は柔らかく、ハーブのような良い香りが口の中に広がる。

甘辛い味付けで、ご飯だけでも食べられそうだ。

夢中で食べ漁っていると、レインはふとティアナの手を見る。

先ほどから、あまり箸が動いていないのだ。

「姉さん?具合でも悪いの?」

「……いいえ。ただ、あんまり食欲が無くて……後、レインが食べていいわよ?」

「いいの?!やった!!」

食欲旺盛なレインは、喜んでティアナのご飯も平らげる。

その様子に、ティアナはクスクスと笑う。

一体その小さい体のどこに入るんだと、ティアナは不思議で仕方がない。

ティアナにとって、この時間が大切だった。だからこそ、胸が痛んだ。

< 3 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop