龍使いの歌姫 ~卵の章~
「おはよう」

「………」

うっすらと目を開けると、飛び込んできたのは銀色の髪。

肩に流すように耳の下で一本結びにしており、紫色の瞳でこちらを見下ろしている。

「……?」

「具合はどうかな?レイン」

不思議そうに青年を見ると、青年はクスッと笑った。

「……どうして、私の名前、知ってるの?」

「君の記憶を読み取ったから」

レインの質問に、青年が答える。そして、レインを抱き起こした。

「……!ティアは?」

青年に起こしてもらい、腕の中の温もりが無いことに気付いたレインは、焦ったように青年に詰め寄る。

「大丈夫。そこにいるよ」

青年が顔だけ振り返ると、レインも青年の肩から顔を出す。

机の上に、小さな籠があり、綿みたいなものが敷かれ、ティアが乗せられていた。

「ティア!」

レインはベットから飛び降りると、ティアの元へと走り、籠から出して抱き締める。

「良かった!……本当に良かった!」

頬擦りをしながら、ふとレインは、ティアがまた重くなったことに気付く。

「?……重い」

「成長している証だからね」

レインの質問に、青年が答えた。

「……貴方は、誰ですか?」

「僕は……レオン。ただの狩人だよ」

「かりゅうど?」

レインの質問に、青年―レオンは頷く。

「そう。……ああ、君にこれを返さなくちゃね」

レオンは懐から横笛を取り出す。

「!」

ハッとしてレインはレオンに駆け寄った。

ティアナが、横笛を決して誰にも渡すなと言っていたのを思い出し、半ば奪い取るように横笛を取る。

そして、それを胸に強く抱き締める。

「……心配しなくていいよ。僕は、君からそれを取り上げようなんて思っていない。そのつもりなら、無くしたことにして隠すからね」

「………」

レオンの安心させるような声に、レインの警戒心も解けていく。

「君の記憶から、君に何があったのかは分かったし、どこに行こうとしてたのかも分かった」

レオンはレインの側まで寄ると、目線を合わせるように屈む。

「君が、ティアナの妹だということもね」

「?姉さんを知ってるの?」

「うん。良く知ってるよ」

レオンはそっとレインの手から横笛を取ると、そのままレインの首へと紐を掛けた。

「ティアナは、僕の古い友人だ」
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