龍使いの歌姫 ~卵の章~
「さて、取り敢えずご飯にしようか。そろそろお昼だし」

言われてレインは窓の外を見た。

「言い忘れてたけど、君は丸一日寝てたんだよ。つまり、君が龍から落ちたのは昨日」

「……龍?」

「君が昨日しがみついていた生き物だよ。あれが龍」

レオンの言葉に、レインは驚く。

「あれが龍なんだ!」

「そう。龍の谷に住む龍で、君の大事なティアも、同じ姿で生まれるよ」

「でも、龍か竜なのかは分からないでしょう?」

レインの疑問に、レオンは考えるような仕草をする。

「……そっか。実際に生まれてから説明した方がいいね。君はティアが生まれるまでに沢山のことを身に付けないとね。勉強と狩りも覚えなきゃいけないし」

一度言葉を切り、不思議そうにこちらを伺うレインに、レオンは続ける。

「ティアが生まれたら、君の疑問に答えてあげるよ。まずはご飯を食べなきゃね」

「?はい」

良く分からないながらも、レインは頷いた。


「……凄い食欲だね。面白い」

「はむっ!もぐもぐっ!」

レオンの分のご飯も平らげるレインに、最初はただ圧倒されていたレオンも、次第に笑いが込み上げてきた。

「ご馳走さまでした!」

頭を軽く下げ、食器を持つ。

「ああ、片付けは僕がやるから」

食器を受け取ろうとすると、レインはぶんぶんと首を振った。

どうやら、レインの中ではもう仕事の一貫らしい。

レオンはしょうがないなと方をすくめ、レインに片付けをお願いした。

だが、そのすぐ後に、お皿の威勢の良い悲鳴が聞こえたことに、レオンは乾いた笑い声をあげたのだった。

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