誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
「あのっ……」
みるみるうちに顔を染める小春を見て、閑がハッとしたように目を見開いた。
そして唇を外し、固まる小春の手を取ると、自分の口元に引き寄せる。
「ごめん、痛かった?」
優しい声で、そうささやいて、閑はそのまま、チュッと労わるように小春の指先にキスをする。
「だっ……大丈夫ですっ……」
小春は顔を真っ赤にしたまま、プルプルと首を横に振り、そっと、手を引いた。
(どうしてこんなことするの~!?)
ドキドキして、心臓が痛い。息が苦しい。
こんなことをされては勘違いしてしまう。
「――見て、ラブラブだよ~」
ふたりの座っているテーブルの横を、女の子二人組が少し笑いながら、それでも残念そうに通り過ぎていく。閑に連絡先を聞いていた女の子たちだ。
「閑さん、今の……」
「え?」
それまでじっと小春を見ていた閑は、目を見開いて、すでに立ち去った女子ふたりの方に視線を向ける。
「ああ……さっきの。連絡先を聞かれたから……好きな子と一緒だから、ごめんねって」
そして閑は、どこか遠慮したような声色で、ささやく。
「迷惑だった?」