明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
つながる想い
そして迎えたパーティは、津田家の一番大きな広間で行われた。

百人くらいは入れるのではないかと思われるここは、畳ではなく洋式の床だった。

ハイカラな電灯や絵画、そして立派な花瓶には豪華な花々が飾られていて、別世界に迷い込んだかのようだ。


取引先の会社や輸出入に関わる政府関係者を多数招いていると聞いている。

そのため、津田紡績側の社員もかなりの人数が準備に駆けずり回っていた。


「あやさん、今日は私がおそばにいられないこともありますので、もうひとりご紹介しておきます」


行基さんが他の上層部の社員らしき人と話をしている間に私のところに来てくれた一ノ瀬さんは、ひとりの男性を伴っていた。

短髪で眼鏡をかけているその人は、表情ひとつ変えず私に小さく会釈してくれる。


「藤原(ふじわら)です。私と一緒に行基さんの秘書業務のようなことをしております。私の手が回らないことがあれば、藤原にお申し付けください」

「藤原です。どうぞよろしくお願いします」
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