明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
あなたが好きなのに
行基さんと身も心も結ばれてから、今までになく心が安定してきたように感じる。

いつか愛してもらえるかもしれないという希望だけでいいと思っていたけれど、本当は愛されたかった。

その愛を存分に注がれて、私の気持ちは高揚していた。


「あやさま。踊りに艶が出てまいりましたね。練習の成果でしょうか?」


舞踊の先生にそんな指摘をされ、ドキリとする。

もちろん練習は欠かさずしているが、艶が出てきたというのは、あれから毎晩のように行基さんに抱かれているからかもしれない。


ずっと私を抱こうとはしなかった彼だけど、一度体をつないでしまうと激しく私を求めてくるようになった。

しかし、正式に社長に就任した彼は一層忙しくなり、帰りが遅くなったり休日を返上するということも増えてしまった。

その代わり、少しでも時間があると、私のことを気遣い誘いだしてくれる。


「あや、いるか?」
「はい。ただいま」


十一時すぎに突然戻ってきた行基さんは、玄関で私を呼ぶ。
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