明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
初子さんもそうだったのかもしれない。
縁談の話を聞くその瞬間までは幸福で満ちあふれていたのに、一瞬でどん底に転げ落ちた。


「初子さん……」


【あやもどうか幸せに】という彼女の最期の言葉は、叶えられそうにない。

でも、行基さんのことだ。
孝義を見守ってくれるという約束は果たしてくれるに違いない。


これで、私の役目は終わり。
もう、この世界の隅っこで細々と生きていければいい。

彼のことを、胸にしまって——。


「恋って苦しいね。どうして人は人を好きになるんだろう……」


空を見上げて初子さんに尋ねても、当然答えてはくれない。


「ごめんね、初子さん。私、もう幸せにはなれそうにないの。約束、したのに」


ギュッと唇を噛みしめると、鉄の味がした。
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