明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
この街も数年前まではさほど栄えてはいなかったが、少し離れた街にある大きな紡績会社・津田(つだ)紡績がすさまじい勢いで業績を伸ばしていて、その結果、工場への雇用が増え経済的に潤うようになったのだとか。

なんでも、社長の息子が積極的に陣頭指揮を取るようになってから、海外との取引がうんと増え、国の上層部も注目しているらしい。

私にはそんな話はピンとこないが、父や母が『津田さんのおかげよね』なんとよく話しているので、よほどすごい人なのだと思っている。


街の中心から少し離れたところには線路が敷かれていて、運がよければもくもくと煙を上げて走る蒸気機関車がうっすらと見える。

どうやら電気で走る電車なるものもできたようだが、まだ目にしたことがない。


あっ、あの人も華族かしら。それともお金持ち?

声に出しはしないが、人間観察が楽しくてたまらない。
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