キンダーガーテン三   ~それぞれの居場所に~
そう言い聞かせてきたけど………

「はぁ~っ。
今日はここまでにしませんか。
このまま先生と一緒に、仕事なんて出来ないので。
………仕事が終わったら、お時間もらえますか?」

目線一つ合わせることなく……

言いたい事を言うと……席をたって部屋に向かった。

主任先生から"大丈夫?"と送られてきた眼差しに

笑顔一つ返して、流しに向かう。

泣いたって……どうしようもないのに……

一人になると涙が溢れてくる。

先生と離れることなんて出来ない。

でも…後半年………二人でやっていくには長すぎる。

先生と付き合ったままの唯を……

咲ちゃんが受け入れてくれるとは思えない。

もう少ししたら…子供達も夏休みを明けて……登園してくる。

後数日。

その時までに、今の状態を変えておかないと

子供達にも悪い影響を与えてしまう……

気持ちばかり焦って、何をどう考えたら良いのか分からなくなってくる。

「唯先生。…………………何かあった?」

低い男の人の声。

先生とは違う、柑橘系の香りが漂う。

「ううん。何でもないよ。」

泣き声を隠すことは無理だけど……

せめて泣き顔は見られないように、下を向いて答えた。

「アイツ……。
何があったか知らないですけど……あの態度は許せないです。
俺で力になれる事があったら……まぁ~頼りないですけど……
何かあったら言って下さいね。
一応アイツとは同期なんで……注意くらいは………」

「ダメ!!……注意なんてしなくていい。
………ありがとう。
でも…ホントに良いから。………咲ちゃんは悪くないから…………。」

「……………………………………。」

< 15 / 149 >

この作品をシェア

pagetop