キンダーガーテン三   ~それぞれの居場所に~
ソッと腕から逃れると

「どうした?……疲れた??」って……心配そうな声を出す先生。

「………………………帰りたく………………ないよぅ……………。」

口にするとますます寂しさが募って。

堪えていたものが……溢れてきた。

………………………………………………。


我が儘を言ってるって……分かってる。

泣いたら……先生が困ることも………。

仕方がないことなのに………。

明日からまた一人だと思うと……淋しいよりも……………怖くなる。

………………うっ……………………ヒィ…………………くっ…………。

泣きじゃくる唯の体を反転させて、そのまま引き寄せると

「ねぇ~唯ちゃん。オレ……帰れなんて言ってないよ。」

小さい子に話しかけるように……ゆっくりと告げる。

「だって……ヒィ……。
明日から………お仕事だもん…………くっ。
帰らないと………ヒック………………ダメ……だから。」

嗚咽混じりに答えると

「オレは、夏休み……遊ぶ為に泊まらせた訳じゃないよね?
『一人にならないように…ここにおいで』って…言ったよね??
淋しいなら……ずっとここにいたら、良いんだよ。」

「でも………先生………ダメだから………。
ヒィ……迷惑………かけるもん………ヒック………。」

「離れて『淋しくないか?』って心配する方が……大変なんだよ。
いいから、気にせずここに居なさい。」

そう言うと

離さないとばかりに……唯の体をギュッと抱きしめる。

「それにね!『帰りたくない』なんて、可愛いセリフ聞いて……
帰せる訳ないでしょう?
今まで通りここにいて、笑っていてください。」

頭にチュッ!ってキスを落として

フワッと抱き上げられた。

「わぁ!!」

びっくりして涙が引っ込んだ唯に

「ちゃんとつかまってないと、落っこちるよ!」って

笑いながらリビングに連れて行き

「掃除も洗濯も…もうおしまい!今日はこのままゆっくりしよう。」と

定番になりつつある先生の膝の間に…下ろされた。
< 2 / 149 >

この作品をシェア

pagetop