俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
そんなこと、はじめてだった。だから俺も嬉しくなったんだ。
美夜のことが次第に気になっていった。
その気持ちが"恋"なのかは、わからない。だけど、たしかに気持ちに変化はあった。
「付き合ってよ」
「うん、いいよ」
「へっ?」
驚いたような顔。放課後の教室にふたりきり。窓から夕陽が差し込み、風がカーテンを揺らす。
クスッと笑うと、みるみるうちに美夜の顔が赤くなり、瞳に水分が含まれていく。
季節は流れて、冬になっていた。
「いま、なんて……」
「だから、いいよ?」
「嘘じゃん」
「嘘じゃないよ」
信じられないといったように、両手のひらで口元を隠す彼女。正解かどうかはわからなかったが、俺は手を伸ばして彼女の頭を優しく撫でた。
好きって感情は、正直まだわからない。だけど、ずっと変わらず俺のことを好きだと言ってくれる彼女だったら、恋人になってもいいのかもしれないって、そう思えたんだ。
ほかの中途半端な女とは違う。"本気"で俺のことを好きだと言ってくれているのだと、感じたんだ。
「嬉しい……っ」
泣いて喜んだ美夜を見て、俺も嬉しくなる。
じんわりと温かいなにかが、心のなかに広がった感覚がした。
それから俺たちの交際は順調に進んでいった。
美味しくてお洒落な隠れ家的なカフェを見つけてふたりでよく通ったし、休みの日もデートをした。
だが、なんの問題もないとそう思っていたのは、俺だけだったことを知る。