俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
忙しない私の胸の鼓動も、浮ついて落ち着かない心も、全部全部、無駄にイケメンな大志くんのせい。
その他の人に見せない飾らない仕草も、ツンツンしている表情も……もっと魅力的に見えるだなんて、きっとなにかの錯覚だ。
好きになんか……ならないもん。
好きになるなよって、何様って感じだし。
「終わった……っ!」
「よし、付き合ったんだからなにか奢れよ」
「は、はあ!?かってに付き合ったのはそっちでしょ!」
「恩知らずが。性格悪いのはお前も同じだな」
「なっ……!」
ケラケラ笑っている大志くんに拍子抜けして、ふたりで教室を出た。結局昇降口前の自販機の前で「コーラでいいよ」なんて言われて、渋々奢ってあげた。なんて優しいんだろう、私。
そのあとも売り言葉に買い言葉、くだらない言い合いをしながら家路につく。
大志くんは自転車で通学しているらしいが、何気に私を駅まで送ってくれたのは優しいなと素直に思った。
「じゃなー」
「うん、ありがとう」
駅に着いて、それまで押していた自転車に跨って来た道を戻っていく大志くんを見送ってから改札を通った。
動き出した電車内で、流れゆく景色を呆然と眺めながら私は火照った頬の熱を感じていた。