俺がこんなに好きなのは、お前だけ。


鼻歌でも奏でたい気分。



「おはよー」



教室に足を踏み入れると同時に大きな声で挨拶をした。みんながそれに「おはよう」と返してくれる。やっぱりこのクラスはいい人の集まりだと思う。


今日はまだ大志くんは登校してないみたいだ。教室内を見回しても姿が見えない。


かばんの中身を引き出しに移し替えて、クラスメイト数人と話をしていると、クラスのみんなが「おはよー」と再び挨拶を投げた。大志くんの登場だった。


微笑みを顔にくっつけて、「おはよ」と爽やかな風を教室に送るのは、人気者のルーティン。
トクンと、可愛らしい音が身体の真ん中で鳴った。


目があって、「おはよ」と言うと「おはよう、小田さん」と微笑まれた。それが私にはすこし不服だった。モヤッと、心に広がる灰色の靄。


大志くんが席について、私と話していたクラスメイトが「おい、大志ー」と、彼を呼んだ。「なにー?」と近づいてくる大志くんにドキドキが始まった。



「来週のテストの山はりなんだけどさぁ……」

「うん」



目の前で話を繰り広げているクラスメイトと大志くんの様子を見る。
だんだんと話に加わってくるクラスメイトたちが増えていく。


大志くんにはやっぱり人を寄せ付ける才能があるんだ。


女の子たちのキラキラした視線がいくつもあることにも気づいた。そうだった。彼は学年一モテる男だった。


いまは一年生だから学年だけでとどまっている人気も、学年が上がるに連れてきっと後輩からも人気になっていくことが容易に予想できる。


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