アスカラール
「でも、もう遅いし…」

「本当に大丈夫です」

成孔に自分の気持ちと胸の痛みに気づかれるのが怖かった。

「そう…じゃあ、家に到着したら連絡するんだよ」

「はい、わかりました…」

美都は返事をすると、カバンを手に持った。

「オランジェット、ありがとうね。

大事に食べるから」

そう言った成孔と一緒に美都はリビングを後にした。

成孔は玄関まで見送りにきた。

美都は靴を履くと、
「それじゃあ、また」
と、言った。

「うん、またね」

そう言って手をあげた成孔に美都は手を振り返すと、ドアを開けた。

バタンとドアを閉めると、美都は息を吐いた。

そっと胸に手を当てると、
「変な感じ…」

そう呟くと、美都はその場を後にしたのだった。
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