身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 侍女達の焦燥した様子に、只ごとでない状況を察知した。同時に、出迎えの中にレーナの姿が見えない事に、胸に言いようのない不安が積もった。

「ブロード様、レーナ様が、いまだレーナ様が帰られておりません!!」

 使用人頭から告げられた瞬間に、目の前が真っ暗に染まる。

 日が沈み、既に数刻が過ぎていた。こんな時分になるまでレーナが戻らなかった事など、これまでただの一度もない。

 なにより人に心配を掛ける事を厭うレーナが、自らの意思で戻らないのだとはとても思えなかった。

「捜索はどうなっている!?」

 それらを加味すれば、何事かの事故や事件に巻き込まれた可能性が最も高いと思われた。

「はい、夕刻よりチャールズ様が指揮を執りまして、屋敷の男衆が二人一組にて、屋敷の近隣から王都までの道のりを中心に隈なく捜索中でございます! ……ですが今のところ、手掛かりは何も見つかっておらず……。一刻前にはチャールズ様が自ら、状況確認に向かわれました」

 家令のチャールズは父の代から仕えている優秀な男だ。そのチャールズが早期から適正に動いていて、足取りの手掛かりも掴めないだと!?


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