身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 ……もしかするとザイード王は、強引な手段を取った事で難しい状況に置かれているのだろうか。

 そんなのは、あってはならない。すぐにでも説得し、引き返させるべきなのに、ザイード王があまりにも晴れやかな笑みを見せるから、私は言葉を失ってしまった。

「奥殿内であれば、自由に過ごしていい。私はこの後、所用で出なければならんが、其方には侍女長を付けている」

 そうこうしている内、ザイード王は名残惜しそうに私の髪をひと撫でして、一人寝台を下りた。

 切なさを孕むその瞳に、胸がざわつく。

 私は攫われて、意思に反してここにいる。
 ザイード王の行為を許す事は出来ないし、私がザイード王に同情するなどお門違いもいいところ。だから別段、同情しようとは思わない

 なのに今、去っていくザイード王に対して私が抱くのは寂寥感。
 妃らと幾夜も同じ夜を過ごしながら、ザイード王はそれを「上滑りの会話」と一蹴した。

 王宮内幾千人に傅かれる頂点にありながら、ザイード王には心の内をあまさずに明かせる者がいない。それはなんて、寂しい事なのだろう。


 王とはきっと、孤独なのだ――。




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