身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい




 許しを得て、私は中庭に散策に出た。

 中庭は綺麗に整えられていた。地面は端から端まで綺麗に掃き目が付いて、枯葉のひとつも落ちていない。

 周囲を囲むように配された花壇には、可憐に花々が揺れる。少し離れた花壇では、侍女と思しき女性が、丁寧に花々の手入れをしていた。

 しばらく中庭を見て回ると、私は設えられた木製ベンチに腰掛けた。

 そうして太陽が真上から斜めに傾き、差し込む影の長さが変わる様を、見るともなしに眺めていた。

「……ブロードさん、きっと心配してる」

 もちろん、一人になって考えるのはブロードさんの事だ。私が急に姿を消して、ブロードさんはどれだけ気を揉んでいるだろう。

 だけど意思に反して引き離された事で、私の心の中に見えてきたものもある。

 ブロードさんという人は、この世界で右も左も分からない私を助けてくれた恩人であり庇護者。

 共に暮らす中、その人柄を知れば、敬愛の念は深まるばかりだった。私はブロードさんに絶対の信頼を寄せ、尊敬していた。

 離れたのはたった一晩。


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