身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 翌日の午後、使用人塔の外壁に背中を預けるユリーナを見かけた。

 ……何やってるんだろう?

 ゆっくりと歩み寄る。

「う~ん、う~ん」

 羽ペンをくるくると回しながら、ユリーナは呻っていた。しかもユリーナは真剣そのもので、私の近寄る気配にもまるっきり気付かない。

「ユリーナ? 何をしてるの?」

 その真剣な様がなんとも可愛くて、ぽんっと綿毛のような金髪を撫でながら問いかけた。

「っ!!」

 けれど、ユリーナはビクリと肩を揺らし、咄嗟に手元を隠そうとした。

「あ、見ちゃまずい? ごめんね」

 ユリーナが秘めておきたいと思う物を強引に見たいとは思わない。
 私は慌ててユリーナに背中を向けた。

「……なんだレーナかぁ。レーナに隠したい訳じゃないから、行かないでよ。実はさ、宿題が分からなくって、手こずってるの」

 けれどユリーナが秘めておきたいと思う人物は私ではなかったようで、ユリーナの方から踵を返そうとする私に待ったをかけた。

「え? 宿題?」
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